千佳を迎えに保健室に向かいながら、考えていた。
夜琉さんが予想以上に大人しかった事、それが何よりの驚きだった。
由莉が兄の事で目を覚まさなかった時の夜琉とは全く違って、逆に恐ろしい。
あの時は怒りをモノにぶつけたり、態度に出していた。
でも今回は静かに沸々と怒りを表していて。
あんまりぃい予感はしなかった。
それに―………
由莉を突き落とした奴は誰だ?
あのぐらいの容姿になってくると、知らない所で恨みを買うことなんてしょっちゅうだ。
でも、由莉の性格は人に恨まれるような性格じゃない。
って事は、那龍絡みか?
でも夜琉さんと由莉が付き合ってるのを知っているのは、本当にごく一部の人間で、その中の誰かがばらしたとは考えにくい。
って事は………誰?
考えれば考える程わからなくなる。
そうこう考えているうちに、保健室に着いて、
「起きてるか?」
カーテンを開いて千佳が寝ているベッドを覗き込んだ。
「寝れるわけがない。寝たら由莉がいなくなりそうで怖い…。」
呟いた声は弱々しく、表情は暗かった。
「由莉はもう大丈夫だ。」
「…。」
そう言っても返事がかえって来る事はなく、むしろ、泣き出しそうな顔にどうしていいかわからなくなった。
「千佳は考えすぎ。心配するのも分かるけど、お前ら程仲良いなら由莉を信じろ―…。由莉は、あんだけじゃへこたれないと思わないか?」
「…。」
「…由莉を信じて待て。必ず元気になって戻ってくると、俺は信じてる。」
「…。」
「…だからとりあえず千佳は寝ろ。千佳は今寝た方がいい。」