処置を軽くした救急団員は担架に由莉をのせるとそのまま、由莉は救急車に運ばれていった。
その様子を一同だれも口を開くことなく、見守っていて。
「どうするんだよ!!」
ここに来てから一度も口を開いて居なかった紅雨が怒声のような口調で言葉を吐き捨てた。
「何でゆうゆうがあんなケガしてんだよッ!!」
怒鳴るような荒い口調に、救急団員の後を引っ付いて周っていた保険医の先生が、戻ってきて
「どうしたの!?」
と声をかけるが、
「どうしたの、じゃねーよ!!何でゆうゆうが救急車で運ばれてんだよ!!ふざけんなよッ。」
周りが見えていないらしい紅雨は暴走しまくって。
「だいたいあなたたち黒峰の生徒が何で華月にいるの!?」
「んなのゆうゆうが心配だったにきまってんだろーがッ!!先公は黙れやっ!!」
「なっ…!!あなたたち!!」
「まじ、うぜぇよ!!」
「紅雨黙れ。」
先生と紅雨のいい争いに終止符をうったのは夜琉で、顔に表情がなく、淡々とした口調は、さっき由莉に声をかけていた時とは別人のような感じがするほど。
「璃玖、帰る。」
電話をまだしていた璃玖に声をかけた夜琉は、すでに歩き出していて。
「夜琉、わかりそうだ。」
「わかったら、俺の前に連れて来い。」
「了解、あんま荒れんなよ。」
「…。」
そう言った後再び電話に戻った璃玖は、携帯を3つ変えて3回電話をしていた。
電話が終わったらしい璃玖は
「華月の先生、今回の事は立派な事件ですよ。生徒が階段から突き落とされてあんな大怪我をしたのなら、本来学校側は警察に連絡するのが常識です。まぁ華月程の大きな進学校に、事件が起きたなんて知られたら華月の名に傷がつきますもんね。」
「…。」