「っち!!!!」

そう舌打ちをした夜琉さんは


「璃玖。」


低く璃玖さんの名前を呼んだ。

「わかってる。」


「1時間で調べろ。」


「半日はかかる。」


「ちっ!!…犯人の特定は1時間だ。」


「わかった。」


主語のない短いやり取りを軽く交わした璃玖さんは、携帯を片手にどこかに電話をかけ始めた。


夜琉さんは倒れている由莉に、歩みよると


「…由莉。」


額に触れながら優しい声色で、呼びかけた。


それでも由莉は気を失ったままで、でも夜琉さんは、穏やかな顔つきで由莉の耳に口をよせると


「―――――…」


何かを呟いていた。


夜琉さんが何を言ったのかは聞こえなかったが、夜琉さんが丁度口を閉ざした時、


「――退いて下さい。」


救急団員が担架をもって現れた。
夜琉さんは救急団員の姿が見えた時、立ち上がり静かに廊下の端によった。