帰る頃には、

三日月が顔を出していた。

帰りたくない。

康介とまだまだ一緒に居たい。

手を繋いでバス停まで向かった。




ここは本当に人気が少ない。

バス停にも人は居ない。

今この地球に、

私と康介だけがいるみたい。



「バスちょっと遅れてんな。」

「だね〜。」


神様がくれたほんの少しの時間だと私は思った。

まだ康介と一緒にいなさいって、

きっと神様がそう言ってくれてる。




「うちの学祭の花火すげーらしいな。」

「そうっ!!私それが目的でここ入ったんだ。」

「まじかよ。単純な奴。」

「楽しみぃぃ〜!!」

「一緒に見るか。」

「え?」

「花火。」





願いが叶う。

花火を見たいだけじゃ入らない。

その花火を、

好きな人と一緒に見るのが夢だった。



「そうだね。」



康介の顔を見ると、

少し照れた表情をしていた。

そんな顔しないでよ。

こっちにまで伝染するじゃん。



「あ、バスが来た。」



神様がくれた特別な時間が終わりを告げる。

この手離したくないなぁ…。

ずっと繋いでいたい。



「あっ、そうだ。」

「ん?」


その時だった。




ーチュッー





唇と、

唇が、

触れた。