「早く南ちゃんと付き合いなよ。」

「は?」

「頼むから…!」

「?」

「お願いだからぁ〜……っ!」

「……康介に何か言われたのか?」



部屋が暗いから分からないと思ってたけど、

すぐに私が泣いていることは勝也にバレた。

無言になる勝也。

なぜだか、

勝也が今どんな表情をしているのかが分かる。

きっと、

少し悲しい顔をしているだろう。




勝也はそっと私の手を握ってきた。

勝也の手はいつも温かい。

たぶん勝也は、

自分が原因で私が康介に何か言われたことを感づいていると思う。

手から伝わる。




「…………。」

「………キスはしないよ。」

「……帰る。」



勝也の香水の残り香だけが部屋に残った。