翌日、私は、吹奏楽部の練習場に行った。
吹奏楽部の練習場は、体育館とは正反対の場所にある、殺風景な広い講堂だった。

「あなたが、のぞみ台中学出身の、矢口さん?私は、2年の吉田よ。」

バレッタで髪を後ろに束ねた、色白の先輩が、アルトサックスを首から下げて、私に近寄ってきた。

「亜衣くんたちが、勧誘にいったでしょ?」

亜衣くん?

彼、アイっていうんだ。

男なのに・・・。

大人っぽくて、雰囲気のある彼からは、こんな女性的な名前、
想像もつかなかった。

でも、そんなミステリアスな名前が、更に、彼の雰囲気を作り出しているように思えた。