潮は引き戸を開けて廊下を見渡し、世良が職員室に入るのを見届けてから戻ってきた。


「でさあ。さっきの話の続きなんだけどお」


「ん? おい牛。続きもなにも相手の女がブスだったって決着付いたじゃないか」


「女の子は可愛かったよ? スタイルも凄く良かったし、アイドルみたいだったんだからあ」


 それを聞いて、疾風は途端に興味津々な様子で身を乗り出してくる。


「おい牛! お前それを何故その時に教えないんだ」


「だって疾風は死にそうにへばってたから……って! 違うんだってば!」


「なあにが違うって言うんだ! そんな可愛い子の姿を独り占めしてお前は何か? 今晩のオカズにでもしようとそういう魂胆むぐぐ……」


 放っておけばいつまでも喋り続けそうな疾風の口を塞ぎ、潮は言った。


「あの子達が歩いてたの、『牛歩』の最中だったんだよ?」