そう言って指差した教室の角には、購買コーナーの看板と共に、受け付けの机と椅子も用意してある。


「案は疾風かもしれないですけどお、実際働いたのはこの野呂潮なんですがあ……」


 あからさまな仏頂面でドローイングデスクに肘鉄を付く潮。


「本当だ。なんてお前達は教師思いの良い生徒なんだっ。ううっ」


 日頃から小さいことでもすぐ感動し、『涙の安売り』を売り物にしている世良は、いとも容易く2人から懐柔されていた。


「これなら目立つから、絵の売り上げも伸びますよお」


「有り難う有り難う。放課後ゆっくり展示させてもらうよ。売り上げが多かったらお前らにもお礼させてくれよな」


 世良は手を振って教室を後にした。