彼女はかぶりを振って、楽しかったあの頃の思い出を脳裏から追い出した。


「考えるのはよそう。あいつに期待を掛けるだけ虚しさが募る」


「……つぶう、待てよお……」


 遠くから太の声が聞こえて来た。


「ちっ、もう目が覚めやがったか。ここん所、日に日に覚醒が早まって始末に負えねえな」


 苦虫を噛み潰したような渋い顔を一瞬見せた後、小粒は走り出していた。


「待てよお小粒う……はぁっ、はぁっ……って追い付ける訳ないよな」


 太は今更ながらに自分の体の重さを呪って、過去に思いを馳せていた。


「ああ、今の小粒も好きだけど……昔の小粒はホント、可愛かったよなああ……」


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