見事に空になった弁当箱を彼女に返すと、靭は教室を出ようとする。


「ちょっと! 靭ってば」


「なんだ? まだデザートでも有んのか?」


 にっこり笑顔で振り向いた靭は、揉み手をしながら近寄ってくる。


「感想よ感想っ! 美味しかったでしょ? 頑張ったんだからっ」


 靭は明らかに落胆した表情を見せていたが、眉根を寄せて唸り出した。


「むむむむんむむ」


「何よ、不味かったとでも言うわけ?」


 靭に弁当をあげた女子は、彼の厚い胸板にくっつきそうになりながら彼を見上げ、射るような眼差しを向けた。