彼はその場で足踏みを始めた。


そして次第にその速度を増して行くと、ついには目にも留まらぬ速さで手足を動かしている。


「うおおおおおおっ!」


 飛び散る汗もそのままに、疾風は動き続ける。


すると世良の腰の辺りに有った絵が、ゆっくりと持ち主の手に戻っていく。


「ぬうおおおおおおっ」


 剰りに早い動きに、最早残像で霊のように透けてしまった疾風が動き続けると、世良は逆回しの映像を見ているように動き、後ろ向きで教室を出て行った。


逆回りをしていた教室の時計は、12時を指した。


「よし、昼休みの始めに戻った。もういいよう、疾風」