『なんて心のお優しいお方なんだろう』


 厳はまた美麗への思いを募らせるが、事務的に電話を取り、車を呼ぶ。


「船井さん。どれ位掛かりますか? はい……解りました」


「どれ位掛かるって?」


「3分だそうです」


「ハヤッ。昨日は5分だったし。いつもどうしてそんなに早いのよ」


 厳は笑ってお茶を濁した。彼のGPS情報は逐一船井がチェックしている。そろそろ頃合いだと見ると、近くに車を停め、待機しているのだ。


「さ、参りましょう」


 厳は流れるようにテーブルの上を片付け、その動作を締め括るように伝票を摘まみ上げると、ボックスのドアを開け、美麗をうながした。


彼女は一連の動作を満足気に見守って部屋を出る。


「3分掛かってませんでしたね」


 支払いを済ませて2人が下界に降り立つと、既に船井が扉を開いて立っていた。