「だけどな。こないだお前は自分が悪く言われるのを顧みず、俺を救ってくれた」


 太は途端に顔を輝かせて小粒を見た。


「仕方がないからこれからは、お前にも悪人退治の手伝いをさせてやろうと思ってな」


「こっ、小粒うう」


 太はドスドスと足を踏み鳴らし、小粒へ抱き付きに行ったが「阿呆!」延髄に旋風脚を喰らって倒れ込む。


「うう、こ……粒……」


「だから調子に乗るなって言った……」


 最後まで彼女の台詞を聞き終わらない内に太の意識は無くなったが、暗闇への緞帳が降ろされる刹那、太はニッコリと笑ったと言う。


「ホントに阿呆だな、このデブ太」


 そう言い捨ててその場を去った小粒の顔にも、うっすらと微笑みが浮かんでいた。


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