齢はまたニコニコと笑い掛け、靭の心をくすぐっている。


「そうだな。あのオッチャンだってひとつの命だ、蔑ろにする奴は許せない」


「こんなこと言ったら怒られるかも知れないけど……靭カッコいいよっ」


 齢が首にぶら下がるのを靭は難なく堪えてはにかんだ。齢本人はまるで意識していないが、やはり女性寄りの行動が目に付く。


『畜生。このまま抱き締めてえ!』


 まだ無邪気な顔でぶら下がり続ける齢から立ちのぼる、コンディショナーのいい香りに負け、靭は両手で抱き締めた……筈だった。


「あ、あれ? 齢?」