「っと」


 彼は片手でシャッターを持ち上げ、空いてる手で男性を引き摺り出した。


「ううっ」


 すると苦痛に顔を歪める男性。


「どっか怪我してるかも知れないよ、僕駅員さんに言ってくる」


 齢はバッグを振り回しながら駆けていった。


「可愛いよな」


 靭がその後ろ姿に投げ掛けた台詞は幸い、誰の耳にも止まらなかった。


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「ご協力有り難うございました」


 駅長からお礼のメトロTOKIO饅頭を手渡され、靭と齢は駅舎を後にした。


「救急隊の人も大丈夫だろうって言ってたし、これでひと安心だね」