「はいっ。俺ですか?」


 帰り支度を始めた生徒達を見て、自らも母校のスタンドに戻ろうとしていた疾風を光が呼び止めた。


「そ。貴方よ」


 疾風は緊張の剰り無言で、しかもピョンピョン飛び跳ねて光の前に進み出る。


「ははは。上がっちゃって歩き方が解らなくなっちゃいましたよ」


 やっとのことで言葉を絞り出した疾風だったが、顔はゆでダコのように赤く染まり、照れ隠しに耳の後ろをガシガシと掻いていた。


「熱心に写真を撮っていたみたいだったけど、いいのは撮れたのかしら」


 少し斜に構えた光に尋ねられ、彼女の気分を損ねてしまったのではないかと思った疾風は、慌ててその場を取り繕おうとしている。