動きが速いのと時を止めるのでは、確かに関係無いように思える。廼斗はこう提案した。


「それは本人に聞いてみないと解らないな。そこから先は光、お前の力で何とか頼むよ」


 廼斗は少しおちゃらけて光に頼み込む。彼のそんな様子を久し振りに見た光は、『これを切っ掛けに廼斗が変わってくれれば』と2つ返事で了承した。


「ねえ。そこの貴方」


 結局試合は慶実の圧倒的勝利に終わっていた。今年3年のピッチャーは硬軟取り混ぜた制球を難なくこなす名手で、しかも針の穴を通すようなコントロールに長けている。


謙譲高校ナインのバットは為す術も無く空を切り、健闘虚しく7回コールド負けとなった。