「…………………」
「ん?あ、いいのかそんだけで?じゃあ、席は北脇の隣の左端だ」
転校生、隼人はそれを聞くなり名前以外は何も語らないまま、スタスタとクラスメイトの視線を浴びながら指定された席へと進んだ。
席は、一番後ろの左端。
右にはイヤホンから大音量の音漏れをし、眠る白髪の男。
そんな如何にも不良の隣の男を無視して、隼人はぼーっと窓の外の景色へと視線を飛ばしす。
ただ、どこかを見るわけでもなく、つまらなさそうに、景色全体をなんとなく視野に入れる。
「なぁ、なぁ、なぁ」
朝のSHRが終わり、短い休み時間になると隼人を金髪の男を中心にクラスメイトの5、6人が取り囲んだ。
「お前さぁー、自分が噂になってるって知ってるー?」
語尾をだらだら伸ばしなから、馬鹿にするような口調で話す男。
それをみて、興味を示す者や、顔が青くなる者、クラス中に様々な表情が浮かび上がる。
「…………………」
しかし、当の本人はというと、全く見向きもせずに先ほどと同じように窓の外に視線を飛ばしていた。
「聞いてんのー?」
相手にされないことに腹を立てた金髪が、がっと隼人の肩をつかみ上げる。
「…………………」
「俺はお前に話しかけてんだけどー」
「…………………」
「耳、ねぇのー?」
「…………………」
ピリピリとした空気が、教室を染めた。
「なぁ、聞こえてんだろ?
人殺しよぉー?」