捜してるのは理想の声。でもそれを言葉で表現するのは難しい。最終的には自分の感覚が頼りだから。
「これで何度目?」
通い慣れたライブハウスで、オーナーの沢口さんに笑われた。
半分は呆れてるんだろうけど。
そういえば何度目だろうか、と指を折って数えてみる。
「5、6、……9回目?かな」
もはや指定席になってしまっているハコの隅にあるドリンクカウンターの、これまた一番端で俺は缶ビールを呷る。
自分がステージに上がる上がらないに関わらず、此処は俺の指定席。
「眞樹くんも早く理想のボーカリスト、見つけられるといいんだがなぁ。僕、君のドラム、結構好きなんだよねー」
また聴きたいよ。そう笑ってから沢口さんは他の客相手にドリンクを作り始めた。その様子を眺めながら、独り言がこぼれる。
「なっかなか見つからねぇんだなぁ、これが」
ホント。いつになったら巡り逢える?
俺の、声に。