「敦士くんさ~ぁ、自分ひとりでバンドやってんじゃないっての分かってるー?ギターやベース、俺のドラムだって、バンドにはなくちゃなんない大切なもんなんだよ?それがなきゃ、敦士は声を出す場所がないっしょ?」
俺はスティックを手にしたままドラムセットから立ち上がり、ギターを抱えてる敦士の傍まで近付いた。トントンとそれで自分の肩を叩きながら。
「ま、確かにボーカリストはバンドの顔だ。これが良くなかったら、どんだけバックが巧くたって意味はない。だけど、そのバンドの顔がいくら歌が巧くても、敦士みたいな考え方する奴がボーカルだったらそのバンド、クソだぜ」
おおっと、汚い言葉を使ってしまった。
敦士相手だとどうも口が悪くなるみたいだ。
だけど言うこと言っとかなきゃこっちは胸くそ悪いから。
敦士はそんな俺の言葉に顔色を変えることなく口を開いた。
「なに真面目に語っちゃってんの?てかさ、ライヴ観にくる女たちなんて、結局はメンバーの顔が目当てじゃん?俺の考え方なんてどうでもいいだろ」
「うっわ、カチーンときたわ、俺。マジでお前のその性根、一回叩き直す」
なんなんだよ、このガキ。有り得ないくらいにムカつく。
俺は握っていたスティックを尚更強く肩に叩きつけていた。
そしたら敦士の声。
「な、性根ってなに?」
「……クソガキが」