こんな時は無性に煙草が吸いたくなるんだけど、ドラムスティックで自分の太腿を軽く叩くことでそれを我慢する。
腿、なにげに青痣だらけ。
「てかさ、俺としてはボーカリストにはボーカリストでいて欲しいんだけど」
「は？別に俺がギター弾こうがなにしようが歌は歌うんだからそれでいいじゃん」
「んー、そうじゃなくて、ボーカリストがギターを弾くのは別にね、構わないんだけど。ただ全曲ずっとギター持ってるのは俺好きじゃないんだよな。なんつーか、こう……歌だけに専念する姿が見たいっつーか」
やっぱりギタリストは欲しい。
そう口にした俺を見た敦士はギターを抱えたままで、しばらく考える様子を見せた。
もちろん、敦士のギターが下手なわけじゃない。弾いたっていいとは思う。でも、３ピースってのは俺の中にはない選択肢だったりする。
別に世の中の３ピースバンドを全て否定するわけじゃないし、ありだとも思うけど。ただ、俺のヤるバンドで３ピースってのは見えてこなかったりするんだ。
イメージが、出来ない。
