進もうとする道には
困難ばかりが転がっているように思えた
☆
「ふざけんな!!」
そんな怒声と共にスタジオのドアが派手な音を立てて閉められた。
不快な残響が耳について、俺は浅い溜め息を吐き、傍らのガキを見詰める。
「敦士ぃー。オマエ、メンバー集める気ぃあるの?」
「……ある」
「だったらなんでもうちょっとさぁ、」
「妥協しろって言うんだろ?嫌だね」
ひとの台詞をぶった切ってそう言い放った敦士は、仏頂面のまま部屋の片隅に置いてあった自分のギターを手にとった。
「ギターは俺がやるからいい。ベースだけ探す」
「マジで言ってる?」
「俺は冗談は言わない」
いやいやいや、十分冗談に聞こえますが。
そうツッコミたいのをぐっと抑えて、俺はもう一度溜め息を吐き出した。
敦士をオトしてから約2週間が経っていた。いろんなライヴハウスやスタジオにメンバー募集のチラシを貼ったり配ったりして、いわばオーディションを繰り返したものの、大抵は敦士の「下手糞」のひとことで殆どの奴が回れ右。
一向に新メンバーが決まる気配がないことに、正直辟易していた。