「なあ、なんで俺?」
なんでコイツは俺を選ぼうとするんだろうか?何故、大勢いる人間の中から、よりによって俺を。
そんな疑問を問い掛けてみた。
『そりゃあオマエが俺の理想の声を持ってるからだよ』
これも何度も聞いた答え。だけど、どうしても信じられない。自分の声にそんな価値があるとは思えなかった。
──だったらなんで。
嫌悪感が胸の内側を這い上がってくる。
吐き出しそうになる泣き言を、辛うじて喉の奥に押し込んだ。
──だったらなんで奴らは俺を切り捨てたんだ?
つい最近まで一緒にいた奴らの顔が、脳裏に浮かぶ。それは、どれもこれもが苦笑いや嘲りの色を浮かべた眼をして、俺を見るから。
「っくそ……、出てくんなオマエ等」
思わず声に出していた。
『敦士?』
耳元で自分を呼ぶ声に、ハッとする。自分が電話している最中だったことを一瞬忘れていたのだと気付いた。
「わりぃ、とにかく俺はしばらくバンドやる気なんてないから」
吐き捨てるように告げて、一方的に電話を切っていた。