「あ!この曲知ってる!!」
レコード店内の推薦盤コーナーだった。その前に群がった女子高生たちの一人の声が、嫌でも耳に滑り込んできた。
耳障りな甲高い声がそのアーティストをべた褒めしていることに胸を逆撫でされる。聞きたくもないのに、そんな言葉たち。
俺は小さく舌打ちをし、その場を離れた。
──なんでアイツ等だけ。
そんな思いに胸の内がどす黒く染まる。
自分だけが取り残されて、置いて行かれたような、そんな気分。
──分かってる。これは嫉妬だ。アイツ等に対する、くだらない嫉妬。
唇を噛み締めながら、手のひらを握りしめた。爪が食い込む。
その時、ジーンズのポケットの携帯電話が鈍い振動を伝えてきた。嫌な予感と共に発信元を見れば。
“橘 眞樹”
「ちっ、またコイツかよ」
思わずもう一度舌打ちをした。