「オマエさ、シュウジのギターじゃないとムリなのか?」





タバコに火を点けながらオーナーがぼそっと言った。





「たぶん、ムリ」





「こだわりはいいことだが、そんなんじゃプロにはなれねえぞ」





「プロになりたいわけじゃない。アタシはただ、シュウジのギターでアイツが喜ぶ演奏をしたいだけ」





煙を吐き出しながらオーナーはアタシが抱いたギターを見ていた。





「だったら、シュウジに借りたらどうだ? 事故は残念だったが、アイツのことだからまだ持ってんじゃないのか? ギター」





「だけど………電話も出てくれないんだ」





「らしくないこと言うなよ。アイツにギター教えてくれって言ったオマエはどこ行ったんだよ?」





アタシが初めてシュウジの演奏を聞いてから、まだ一年しか経っていない。





心の奥底がこれまでにないほど揺さぶられたあの感覚を、今のアタシは忘れてしまっている。