苦しい、だって。

 俺の言葉でドキドキしすぎて呼吸するのもままならない、ということだろう。

 ミナ、どこまでも可愛いやつ。

 その後ろ姿は華奢で、栗色の長い髪が背中まで垂れている。俺は抱きつきたくなる。

 人間になったら、こんなにも理性を働かせなくてはならない。正直つらい部分もあるけれど、うまくいかないところがまた楽しい。


 「……ミナ…」

 「………分かったわよっ。行きましょう? …で、デートに……」


 なぜそこでどもる。


 まあ、いいか。可愛いから。


 「……よかったぁっ……! じゃ、日曜ね!」


 「言っとくけど、まだ付き合ってる設定じゃないからねっ……勘違いしないでっ」


 「……ハイハイ」


 分かってますよ。分かってますって。だって、俺もちゃんと告白したいし。もちろん、とびきりの甘い言葉で。

 「あとっ……」


 「何?」


 「さっきみたいな言葉を吐かないで。私、心臓がはち切れそうで……」


 何でそんなに可愛いことを言うんだよ。ミナは天然すぎる。そんなこと、言われた男が平気でいられるはずがない。

 「……それは約束できないな」

 「何でよっ。あなたといると心臓に悪くてイヤっ!」

 おいおい、そこまで拒絶しなくてもいいじゃないか。でも、その言葉でさえも俺は嬉しく感じる。

 だって、ドキドキしすぎて苦しいんだろう?


 実際それが狙いなんだもの。照れてるミナは……俺を息ができないほどドキドキさせて、強い引力で惹き付けてしまっている。

 その姿を目にすると、もう手放したくないって思えてくるんだ。

 俺はそんなミナが好きだよ。


 もう俺がミナから離れられるワケないじゃないか。


 「……分かったよ……極力言わないようにするからさ……」


 自信はないが。