「……ミナ…」

 ダメだなあ。これくらいで顔を赤らめていては、この先もっと歯の浮くような言葉が待っているのにやっていけないじゃないか。


 「……ミナ。日曜日デートしよう。映画館にでも行く?」

 「……何で…私たち恋人同士でもないのに」


 「それなら、俺たち付き合っちゃえばいいじゃん」

 「………え」

 ミナは眉をハの字にさせて、赤い顔で首を傾げた。

 それはどこの女の子よりも可愛らしくて。

 本人は色気を使ってそういうことをしているワケじゃないと思うけど、俺からしてみれば誘っているように見える。


 ああ…もう理性が飛んでいきそう……。


 俺は何とか、ミナを抱き締めたい衝動を抑えた。

 抑えるのも容易じゃない。



 「――…俺はミナといる時間が欲しい……――」


 ミナは気まずそうに俯く。


 ああ…、そのキレイな顔を隠さないで。俺はもっと眺めていたい。


 「……んもうっ…」


 彼女は下を向いたままずかずかと歩き出した。心なしか俺のことを見るのを避けている気がする。


 「…ミナ…」

 「……ばかっ。ばかばかっ……!」

 赤面しながら早足で歩く彼女の後ろを俺はニヤケながら付いていく。

 「……これ以上私を苦しくさせないでよっ……もう、バカ皐」

 俺は、この言葉で少し嬉しくなった。