ここは、引き離してみる。

 絶対、彼女は俺を引き止めるはずだ。

 なぜなら、彼女は俺が好きだから。


 「ごめん……もうミナとは、一緒にいないからさ……そんなに怒んないでよ」

 彼女は無言だった。

 そんな彼女の後ろを歩いてしばらく階段を上ると、地学室に着いてしまった。俺がうなだれたフリをしてその部屋に入ろうとすると、彼女は後ろから俺の腕を掴んだ。



 「……皐」

 その顔は、寂しさを自覚しているものだった。

 ああ、やっぱりね。

 彼女は、もう俺なしでは生きていけなくなっているんだ。


 因みに皐とは俺の人間の名前。

 「……皐、ごめんね……。あまりにもヒドイこと言っちゃった……ごめん、謝る」

 「……いいよ。いつものことだし」

 俺には、その辛辣な言葉でさえも、甘い囁きに聞こえるんだ。

 もっと言ってくれても構わない。

 それは、俺のことを好いているって証だから。