[阪本]
作家先生が久留米のところに姿を現したのは、あの一件から2日ほど経ってからだった。
「…で?」
「お前に話す事なんてない」
「丁子と何かあったのかよ」
「直接関係があった訳じゃない」
「…作家先生」
「もう作家じゃない」
久留米がドバッと何時ものバーボンをグラスに注ぐ。
「…久留米」
俺が久留米を見ると、何時もの奇抜な格好をした奴は、口許をニンマリと緩めた。
「吐く物吐かせた方が良いと思うよお」
「…吐くって……物理的な意味で?」
「両方」
音譜が語尾に付きそうな程に楽しそうに笑う久留米。
「久留米」
「はいはい?」
無言で空のグラスを突き出す先生を見て、つくづく男って馬鹿だな、と呟いた。