「…竹之内」

「ん」

「痛い」

「…ごめん」

キツく握ったままだった腕を放した。
真朱はこっちを見詰めた。

「あの人たちと知り合いなの?」

「赤頭とは個人的に。松葉とは、………何なんだろうな」

「竹之内ってヤク―――――」

「違う!」

俺はそんな落ちた人間じゃ無い。

「んな強く言わなくたって良いじゃん」

ぎゅっと鞄の持ち手を握り締めた真朱が俯く。

「ごめん」


ああ、俺、何でこいつの前だと無愛想になるかな。


「…走ったの?」

「……別に」

ポタポタと流れる汗が止まらない。
シャツの袖で目元の汗を拭うと、真朱がタオルを胸に押し付けてくる。
洗剤の匂いがかすかにした。

「じゃ、あたし行くとこあるから」

真朱はスタスタと歩いていってしまう。

「え……コレは…って、おい、」

俺は後を追いかけようとしたが、一度真朱が振り向いて、来るなと言う顔をしたので足を止めた。