顔を上げて、
何か考えてから、
書く時に首を曲げて書く彼―――――隥本茜(サカモトアカネ)。

ここら辺一帯を取り仕切る、とある暴力団に所属している。

攻撃的な赤い髪に、釣り上がった目。
吐き出す言葉は荒っぽく、正直年下といえども最初は近寄り難かった。
だが、案外こいつは情に厚かったり、面倒見が良いことに気付いた。

「…何作ろうか」

「何でもいいけど、賞味期限切れてないのにしろよ!あと変な草とか入れたらぶっ殺す!」

そういえば、こいつは地獄耳だ。

「変な草じゃなくて薬草って言って欲しいねえ」

そう言い返すと、茜の声がしなくなった。

「全く都合の良い奴…」

「あ?」

「……」

俺は口を噤むと、冷蔵庫を開けた。

と、その時、ドアベルが鳴った。