「…で、職業は?」

「正義のヒー…」
「嘘だ」
「何でそんなこと言い切れる?」
「…似合わないから」

あ   集中力切れた。

あたしはカンペンにシャーペンと消しゴムを戻すと、ノートらを片付け、バッグから、本を取り出した。

「…何ソレ」

シャーペンをクルクルと回しながら顔を上げずに、竹之内が聞いてくる。

「ん?ケータイ小説、です」

「悪趣味」

悪趣味はアンタの服装ですが。

「えー?あたしもあんまり読まなかったけど、この人の面白いんですもん」

のおち ことみ。

この本の著者。
中高生に爆発的な人気を誇るケータイ小説家。

記号とか、顔文字とか、そんなの使わなくたってケータイ小説は書ける

って言う言葉をHPに上げて、賛否両論、話題になった。

「…で?」

「それで、生まれが土器らしいんで、今度、記事にしてみたらって部長に言われて」

ふーん、と興味なさげに頬杖をつく竹之内。

「何部?」

「あ、新聞部、と弓道部、掛け持ちしてます」

新聞部は週2日、弓道部は週6日。
先輩のタイプが全然違うけど、楽しくて、充実している。
その内ちゃんと好きな人出来て、付き合ったり…とか淡い期待を抱いているが、多分、今のめまぐるしい生活に慣れるまで無理。

「それで、ソレを読んでる、と」

「ええ。面白いですよ」

読んでみます?と言えば、
そんな悪趣味な表紙の本は読む気しないね、と返って来た。

「こんなのまだ悪趣味じゃないですよ」

言うと、そうですか、と肩を竦められた。