原稿や、のおち先生に聞く事を書き出して行くと、竹之内と目が合った。
相変わらず、つまらなそうにあたしを見る。

「…で、分かったのか」

「何がですか?」

「俺の名前」

「……………」

正直、忘れてた、なんて言ったら怒るんだろうなぁ…
それほど、のおち先生に会うことで頭が一杯だった。
優しそうな声で、

『丁度新刊に取りかかる前なので、構いませんよ』

と言ってくださったのだ。

上の空で、あたしは言った。

「分かんないです」

「…彼とのデートで頭が一杯か?」

ああ、まだこの人には言ってなかったんだっけか。
でも言ったところでどうにもならないんだろうな…ケータイ小説嫌いっぽいし。

「…おい?」

言い過ぎたと思ったのか、心配そうにこっちを見てくる。

「いえ。大丈夫、です」

そういえば、竹之内は、そうか、とだけ呟いて、何かを書いている。