[真朱]
あれ。この空気。
マズくない?
黒鳶がひょいとあたしを抱えた。
紅鳶は苦笑しながら、玄関のドアを開けた。
「あ」
生命の驚いた様な顔。
松葉の笑み。
全て、元通りになった、のかなあ…
「何が食いたい?」
「あ 寿司が良い、回んないの」
「えー?店行くの?出前で良い?」
「良いですよ全然」
「有希!」
生命が眉間にシワを寄せた。
「ごめん!帰ったら絶対やるから!」
「んなに寿司食いてえのかよ…」
黒鳶がボヤく。
「だって生命くん全然売れてないもんね」
と松葉。
「あんたこそ意地汚い商売で儲けてんでしょ」
と生命。
黒鳶に担がれながら、あたしは松葉と生命の間に火花が散ったのが見えた。
何かまた事ある毎に来るんだろうなあと思いつつ、下に降り、高そうな黒塗りの車に乗り込んだ。
end.