[松葉]
「竹之内くーん」
オートロックの機械に向かって、声をかけた。
「…あいつ寝てんじゃねえの」
後ろでぼそりと黒鳶がボヤく。
まあまあ、と紅鳶が宥める。
「諦めます?」
紅鳶が困った様に笑う。
俺は不敵に笑い、
「おいおい、誰が此処のマンション探したと思ってんだ?」
懐から千円札を取り出して、縦に少し折り目をつける。
それをガラスのドアとドアの間に勢いをつけて、投げ込んだ。
紙は、細いドアの間を突き抜けた後、広がって、大理石調の床の上にヒラヒラと舞う。
それと同時に、ドアが開く。
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