[竹之内]

返事をしない有希の肩が震え出した。


"ごめんなさい"


色の悪い唇が、そう形を作った。

有希の手足の震えが酷くなる。
息も浅い。

俺は、有希の冷たい手を握ると、一番前にいる松葉に向かって走った。

「松葉!」

叫ぶと、松葉が振り向いた。
腹部を左手で押さえている。
手も、その下のワイシャツも真っ赤に染まっていた。

俺は大股で距離を詰めて行く。

「こいつパニックになっーーー」

頷き、苦しそうに顔を歪めた松葉。



松葉が、倒れた。