[真朱]
ぐいぐいと、竹之内が手を引っ張って行く。
と、空いている方の手が無遠慮に掴まれた。
「痛っ…」
振り向くと、ニヤニヤと笑みを浮かべる男で、
「たけの…」
いつ、竹之内が振り向いたのか、分からなかった。
男に向かって、木刀を突き出して、肩を突く。
ドス、と鈍い音がした。
竹之内は、蹲る男を冷たく見下ろして、言う。
「俺のだ。…気安く触るな」
竹之内の唸る様な低い声に、心臓が縮み上がった。
初めて聞いた。そんな声。
「…お前も状況をよく見ろ」
相変わらず低い声の竹之内と、目を合わせるのが怖かった。