[真朱]
ジョーヴェが楽しそうに校内を歩いて行く。
煙草の煙がゆらゆらと揺れる。
それについて行くあたしは、窓ガラスに映る自分の姿をぼーっと見つめていた。
「…ジョーヴェ」
「あ?」
「……怖い?」
「まさか。ドキドキしておっ勃ちそうだぜ」
ヘラヘラと笑うジョーヴェの隣に並んだ。
「ねえ、どうなるの?」
「さあ」
「あたしには、こんなの無意味だと思うんだけど」
わざわざこんな事しなくても話し合いは出来るでしょ?
言うと、ジョーヴェが笑う。
「そうだな」
「…そうだな、って」
「俺は楽しけりゃなんでも良いんだけどな」
「…頭可笑しいんじゃないの」
「よく言われるよ」
喉の奥で笑うジョーヴェを見上げると、肩を抱かれた。
またか、と思っていると、黒い指輪を手の平に落とされる。
「前に人が出て来たら、キツく握ってから投げなさい」
握り締めようとすると、今は止めとけ、と指輪を制服の胸ポケットに入れられた。