「微熱がありますね」

それを言われても上の空だった。

坂本と松葉のことで頭が一杯で、

「…竹之内、さん?」

「え…ああ、はい」

「さっき黒から聞いたんですけど、坂本さんの事で少し、何かあったそうですね」

「…はい」

多摩木さんーーー紅鳶は、優しく笑う。

「そういうものって、デリケートなんだと思います」

…あれ、俺何時布団に寝かされたっけ?

冷えピタを額に貼ってもらいながら、紅鳶は続けた。

「好きな人って自由に選んで良いと思うんです」

「…」

「竹之内さんは、好きな人、いますか?」

好きな人?

…誰だろう。

「じゃあ、会いたい人は?」

会いたい、

なんか…真朱に会いたい。

無性に会いたい。

「その人の事、話してもらえますか」

「…とにかく生意気で、意地っ張りで、本が好き、です。俺が書いた本を好きだと言ってくれる人です。それと努力が出来て、数学と古典の文法が苦手で、特進科にいるんだけどこれじゃあダメだな、ってよく言ってて、…………あ」

分かったかも。