「丁子、怒らせたんだろ」
部屋に入るなりクロと呼ばれた男が聞いてきた。
「…ええ、」
「理由はどうであれ、引き摺るなよ。あの人びっくりするぐらい切り替え早いから」
「あの…名前は…」
「多摩木黒鳶(タマキクロトビ)」
「え、多摩木って」
多摩木さんと、兄弟、なのか?
「あー、血は繋がってねえよ。俺ら捨て子だから」
「…そうですか」
「もう1人の方は多摩木紅鳶(タマキベニトビ)ってんだ」
そう言うと、黒鳶は俺を見つめた。
顔じゃなくてーーーー手の辺り。
「襲われそうになったのか?」
「…違います」
ま、なんでも良いや、と言って、黒鳶は部屋から出て行った。