「大丈夫ですか?」

顔を上げる。

多摩木さんが心配そうな顔をしていた。

「…大丈夫です」

多摩木さんはそっと、額に手を伸ばす。
女の様に細くて、握ったら折れてしまいそうな冷たい手が、前髪を上げ、額に押し付けられた。

坂本は、今どんな気持ちだろう

「熱、あるかもしれません」

クロ、と誰かを呼ぶ。
何処からともなく、目つきが鋭い男が現れて、俺を立たせた。

「…僕の部屋に運んで」

そう一言言って多摩木さんは何処かに行ってしまった。