[Giove]
その後はお互い喋らず、寺田のホテルについた。
「…四方田に言われて来た。場所は?」
「最上階にいらっしゃると思います」
「分かった」
視線を合わせてニッコリ笑うと、ボーイは頭を下げた。
車のキーを渡して、真朱を振り返る。
「行くぞ」
「あ…うん」
上げた顔には、元気が無かった。
蒸し暑い風が吹き抜けた。
「何、まだ引き摺ってんの」
「だって……わっ?!」
「あーもう、だから責任持てつったろが」
真朱を肩に担いだ。
「降ろしてよ!」
暑いし苛々する。
「…あっちーんだよ、此処」
ソレだけ言って、バタバタと暴れる四肢を無視し、重く、鉄で出来た裏口を開けた。
…何で入り口じゃないかって?
んなのこんなガラの悪そーなヤツが入り口から入って行くのを見たら、誰だって入り辛くなるだろ?
VIP専用の入り口もあるけど、俺、一応雇われてる身ですから。
「あとあんまり暴れるとパンツ見えるぞ」
「スパッツ履いてるから平気だし!離して!」
「そう言う問題じゃ無いでしょ?女の子なんだからもっと大人しく……痛っ」
俺の脇腹にチョップが入った。
そして、大人しくなる。