[真朱]
「ねえ!どういうことなの!?」
さっきの男の顔と言葉が頭から離れない。
もしかするとさっきの人は良い人でそれでジョーヴェは悪い人?
でもジョーヴェはあたしに選択肢をくれてあたしは…
あああ、分からない。
「…今のは、多分加藤の部下だろうな、下っ端の」
静かに、ジョーヴェが言った。
え、てことは黙ってついて行ったら、竹之内にーーー
「お前は、向こうじゃなくて俺を選んだ」
嬉しーぜ、真朱。
喉の奥でジョーヴェが笑う。
これは、嵌められたのか?
それとも単に嬉しいだけか?
「…ねえ、あたしは間違ってる?」
問えば、ジョーヴェが笑うのを止め、バックミラー越しに視線が合った。
「こっちの世界に善人なんざいねえよ」
「…うん」
「だから、間違ってるっつーのはシノギーーーああ、儲け話で何か失敗した時に言う」
「…」
「人間を選ぶのなんて、そんなの自分で責任持って見定めろ」
静かな分、重かった。