「臭い」
「仕方ないだろ」
ゴトンと音を立てて置くと、竹之内に睨まれた。
「…音を立てて置くな」
「はいはい……あ?」
竹之内、と刺繍の入った垂れが目に入った。
「知り合いか?」
竹之内に見せると、
「俺の兄だ」
と返ってきた。
「え…うそ」
「うそ」
そう言えば、この人を知っている。
俺が組に入ったばっかの時、幹部をしていた。
外見は竹之内と全く違い、ガタイの良い髭面のーーーー
「どんな人だった?」
「……良い人、だったよ」
「………死んだの?」
「…多分」
加藤あたりに聞けば、分かるんじゃねえの。
「いや、良いよ。知らないし」
くっくっく、と笑う竹之内はまた手を動かし始めた。