[木月]
「あーつい!真朱は今日もこない!」
「…あ、誰か来た」
ガラリと部室の戸が引かれて、誰かが入ってきた。
「おー…はよ?」
俺が手を上げると、おう、と答える。
ゆらりと揺れる長身、耳に光るシルバーピアス。
それを際立たせているのがーーー金髪。
「…高原?くん?」
「…田原」
「…ごめん」
田原芥子。
その人だった。
「…部長は?」
「まだ来てねえよ」
「…そっか」
そう言うと、くるりと俺らに背を向け、部室を出て行こうとする。
「…部活は?」
「………補習あるから」
ってか此処の部やる気ないし。
来ても意味ないかなって。
バカにした様な言い方では無かった。
「あ…俺がそう思うだけだから。実際のとこはどうか知らないけど」
じゃあね。
ヒラヒラと手を振って、部室から去った田原。
俺と谷内は、しばらくの間動けなかった。