[真朱]
マルテがぐいぐいとあたしの手を引っ張って行く。
一階におりて、蒸し暑い中に出た時、やっぱり竹之内のマンションだと確認した。
「…マルテ、さん?」
「来て」
…日本語は出来ない筈じゃ?
「…ジョーヴェ、俺、日本語、駄目、言う」
ジョーヴェは俺が日本語出来ないって言った
ってこと?
「……うん」
「but,あー…少し、出来る」
少しなら出来る
「そっか…」
「…ごめん、ジョーヴェ、実は、悪く、ない」
「…女癖が悪いだけで?」
言うと、疑問符を浮かべ、首を傾げた。
少ししか日本語分かんないって言ってたもんね…
何だかそれが可笑しくてクスッと笑ってしまう。
「…分かったよ」
「ありがとう」
ニコッとマルテが笑う。
かなり可愛い。
「あ…てか、何で長袖?」
「え?」
先ほどから気になってはいたが、どうしてマルテはこのクソ暑い中、長袖Tシャツを着ているのだろうか。
「…袖……」
自分の腕の上を滑らせる様に長袖と半袖を表現すると、ああ、とマルテは頷いた。
そして、
「怖い、ない?」
怖がらない?と言っているのだろうか。
「うん、どうして?…Why?」
そう聞くと、マルテは黙って袖を捲った。