[坂本]
目の前の男の箸がふらふらと彷徨っている。
朝飯も昼飯もすっ飛ばす様な出来事があった所だったが、車に乗り込んだとき、
男の腹の虫が鳴いた。
仕方ねえな、と一応組の料理長の俺がテキトーにあったものを作ってやった。
此処までは良い。別に怒っちゃいない。
彷徨っていた箸が、大して味のしみこんでいない煮付けのじゃが芋を少し崩す。
「…」
ホントに少しだけ、崩した一片を、口の中に放る。
麦茶を飲んで、一息吐く。
そしてまたふらふらと―――――
「食う気あんのかてめえ!」
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