「蒼井さん、観覧車乗る?」


「えっ……。」





…あ、あぁ……観覧車……。






そう、だよね……観覧車………。








頭では、分かってる。



最初から、それが目的だったのだ。


……あたしから誘う手間だって、省けたじゃない。








………なのに。




なんで、あたし

こんなに困ってるの?






「リニューアルしてさ、あの観覧車、『星空観覧車』って呼ばれてるんだって。」


「星空観覧車?」


「そう。星が掴めそうなくらい、すげぇ景色だって話題。」





何か言わなきゃいけないのに、言葉が見つからない。




俯くあたしに、志木くんは言った。





「それとも、他に一緒に乗りたい奴がいるとか?」



あたしは、顔を上げる。


志木くんの表情からは、何も読み取れない。







「ここへ来てすぐ、モモが帰るって言った時。
蒼井さん、すごく悲しそうな顔してたから。」


「……あ…たし…。」



「好きなんでしょう?モモの事。」







………あたしは……モモの事……モモの事が……。