煙草を手に取り、火を点けようとライターを何度もカチカチと鳴らす。




窓の外からは、小学生の元気な笑い声が聞こえ


空は雲一つさえなく


取り巻くすべてが今のあたしを苛立たせ、悲しくさせた。




机の上には、卒業式の日にコウタから貰ったネクタイと第2ボタンが置かれていて


部屋には、ドルガバの、ライトブルーの香りが残っていた。



こんなにもあたしのいる環境は変わらないというのに

心境だけは、全ての色を失っている。





メールを開き、一つ一つに返事を作る。たわいもない内容に、精一杯明るさを示す様。



こんなとき、普通ならみんな、どうしるのだろうか。


悲しい、と誰かに話を聞いてもらうのだろいか。



寂しい、と誰かに泣きつくのだろうか。




どちらにせよ、あたしにはできもしないことだった。




人は人の幸せなど、願えやしない。人は人の不幸にほど、好奇の目を光らしただろう。



"あなたには幸せになってもらいたい"だなんて

"お陰さまで"と、挨拶をするような社交辞令に等しいもので。




そんなことない、と目を潤ませながら言う人間がいたのなら


その人は、たいそう幸せな人間だったのだろう。



自分が相手よりも幸せである、と思うからこそ、優しくあれる。
誰かよりも下に位置すると感じるからこそ、惨めになれる。





あたしは絶対に、胸の内など明かしやしない。