『どうした?由実


しけた顔してんじゃねぇぞ』




洗い物をしながら、ぼうっとしていると


さっきまで笑っていた幸さんが、ぶすっと膨れたように、そう言った。



『ふふ、ごめんなさい。


拗ねないで、幸さん。』



『拗ねてねぇよ』




並んだ8つのカウンターは、幸さんも含め、半分しか埋まっておらず



このままの流れだと、上がりは22時くらいかな、と考えていた。



今日はなんだかすごく疲れている。


できることならば、今すぐにでも家に帰りたい。




だけど、そんな気持ちとは裏腹


幸さんの口からは上機嫌に、あたしを憂鬱にさせる言葉が飛び出した。




『由実、このあと付き合え』


『え?』


『そろそろ上がりだろ』


『え?』



幸さんは店長に目配せをすると

満足そうに口元をあげた。




店長からの、ゴーサインだ。